吉富町の自然と社会
吉富町は、福岡県の最東端に位置し、東は英彦山を源とする一級河川の山国川を境に大分県中津市に接し、西は読経ヶ岳を源とした二級河川佐井川を隔てて豊前市に隣接し、南は築上郡上毛町に接しています。また、遠く南には、山岳宗教で有名な求菩提山や天然記念物の「ツクシシャクナゲ」が多く自生する犬ヶ岳などの英彦山山地の連山を背景に、北は周防灘に面した豊かな水と緑あふれる美しい自然に囲まれた町です。
町域は南北4.0キロメートル、東西1.8キロメートル、面積は5.68平方キロメートルで、南西から北に向かって緩やかに傾斜する平坦地で、集落は東の山国川沿いと天仲寺山麓、西側の佐井川沿いや鈴熊山麓のように2つの川と2つの小高い山を中心に田園都市特有の集落が点在しています。集落には古くからの歴史遺産も残しており、山国川沿いには、行政や文化の中心となっています広津があり、これより河口に向い、城井谷の宇都宮一族にゆかりの深い小犬丸、4年に一度細男舞・神相撲が奉納される八幡古表神社のある高浜など密集して連なっています。佐井川沿いの集落は、安産の神を祀り、浄水を壷に献水して翌年の降水量を占う伝統行事が行われる壷神社のある土屋、中津藩領を示す藩界石のある直江、河口西岸には小倉領を示す藩界石のある豊前市との境界でもある界木があります。また、幕末の剣聖島田虎之助の修練の地として有名な天仲寺公園の北側には、吉富小学校のある和井田があり、国指定重要文化財の薬師如来坐像を所蔵する鈴熊寺の東側に鈴熊、南側には楡生山古墳のある楡生、さらに別府と連なっています。
このような歴史遺産の点在する集落を一望できる天仲寺山は、吉富町にゆかりの深い中津小笠原初代藩主の長次公の墓や豊前・築上地区で最大規模の複室の横穴式石室を持つ天仲寺古墳があります。一方、それぞれの集落には今もなお、神輿や神楽を奉納する祭りが残っており、秋には町内各所でお囃子の音を聴くことができます。ほかにも、大漁を祈願する八幡古表神社の「放生会」や町内を傘鉾行列が賑やかに練り歩く「御神幸」、天草・島原の乱での死傷者の供養踊りとされる「番所踊り」など地域特有の伝統文化財が残っています。